新規開発したPicoシリーズ拡張基板について その3

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今回から何回かに分けて、Pico Crust Boardを使って製作した本格的な環境制御システムについて紹介していきます。前回「Crust Boardを使えば、統合・複合型のスマート農業システムも作れる」と書きましたが、実のところCrust Boardは「本格的な環境制御システムを構築するために設計されたデバイス」になります。Crust Boardがそういったデバイスになっているのには、私が経験してきた2つの話が絡んでいます。

1つ目の話:Picoへの印象

私は以前に、クラウドファンディングで「環境計測システムをDIYできるPicoの拡張基板」を作って頒布したことがあります。それは農業生産の現場で年単位で使っていただいているのですが、その頒布や現場使用の経験を通して、Picoについて以下のような良さと課題を感じてきました。

  • モデルの分かりやすさ: モデルは4種類(Pico / Pico W / Pico 2 / Pico 2 W)のみなので迷わない
  • 開発のシンプルさ: OSインストールとセットアップが不要で、開発環境準備も簡単
  • 異常時復旧性の弱さ: 異常停止時に自動復旧する仕組みは十分ではない
  • エコシステムの未整備: サンプルプログラムやライブラリはまだ十分ではない

言い換えると、Picoは教育や学習用途としては非常に入りやすいのですが、実務や現場でスムーズに使うための仕組みはまだ十分に整っておらず、その部分を補うことができれば、より良いものになるのではないかと思えました。

2つ目の話:以前作っていたRaspberry Piを使った環境制御システム

私は、これも以前に、(Picoではなく)Raspberry Piを使って環境制御システムを開発していました。そのシステムは多くのユーザーに受け入れられ、全国的にも相応に普及したのですが、幾つかの課題・改善点があると感じていました。当時感じていた主な課題は以下のものです。

  • SDカード起因の脆弱性: Raspberry PiはSDカードでプログラムが動くので、そこが壊れるとシステム停止する
  • 制御点数の制限: 環境制御システム1台ごとの制御点数が多くはない
  • 設定の複雑さ: 柔軟でカスタマイズ性は高いが、その一方で初心者には設定が難しい

このシステムには非常に優れた点も多くあったのですが、私はこれらの課題を解決し、より使いやすく安定した環境制御システムを作りたいと考えていました。

Crust Board誕生の経緯

こういった経験を踏まえ、私は「Picoを使った、初心者でも簡単に始められて、やろうと思えば現場運用に耐える環境制御システムもDIY出来るような仕組み」と「それで製作したシンプルで本格的な制御機」があると、上記の2つの話に対する、自分なりの回答になって良いのではと考えるようになりました。そうして作ったのがCrust Boardと、それで製作した制御機になります。そのためこの2つのプロダクトは、以下のような特徴やコンセプトを持っています。

■ Crust Boardの特徴・コンセプト

  • 開発の分かりやすさ: Picoのピンが分かりやすく整理され、初心者でも簡単に扱える
  • 長期運用に耐える設計: 長期安定稼働のために、異常時の自動復旧機能などを持っている
  • 環境制御DIYに対応: 多様なデバイスを接続して動かせるので、本格的な環境制御システムがDIYできる

■ 制御機の特徴・コンセプト

  • SDカード問題の回避: Picoは本体Flash ROMでプログラムが動くので、SDカード依存の脆弱性問題を回避
  • 制御点数の確保: 1台である程度の生産者ニーズを満たせるような多点制御設計
  • 操作性のシンプルさ: 操作や設定が複雑ではなくシンプルで分かりやすい
Pico 2 W+Crust Board+MicroPythonで製作した環境制御システムのUI

長くなりましたので、次回に続きます。